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    あなたの―

    • 2010.06.02 Wednesday
    • 18:58
    wild-rose.jpg
    心に愛を抱(いだ)くこと
    刺もつ薔薇を纏うこと
    海に映る日の出のようなあなたのからだ
    この髪伸ばして包み籠み絡め取ろう
    想いの葛(かずら)は緑の鎖
    夜に浮かぶ燐のように
    せせらぎに舞う螢のように
    仄かに儚く確かに在るもの
    あなたの目を一つください
    わたしの視界はあなたに眩む
    あなたをもっと見たい
    あなたの足を貸してください
    わたしの足は竦んでしまう
    傍にいきたい
    あなたの肺を分けてください
    わたしの肺はもうもたない
    息を ください
    あなたのすべて

    この胸の土塊

    • 2010.06.03 Thursday
    • 21:34
    JUGEMテーマ:

    この胸の土塊(つちくれ)に
    瑠璃色の鳥が贈り物をくれました
    噛み砕かれた赤い実
    聞くところに拠ると
    たいそう甘く滋養のある実で
    お天道様とよくお喋りをしていたそうです
    あなたの胸元は
    あまりに寂し気だから
    瑠璃色の鳥はそう言って
    光の咲く空へ飛んで行きました

    今朝のことです
    土塊がムクムク動き出し
    胸がうずうずし始めたのです
    驚いて問い掛けると
    胸の土塊が恥ずかしそうに答えました
    鳥が下すった実が妙なことを言うのですよ
    露になった種が
    やっと目をお覚ましになったとかで
    今夜あたり
    思いが募って芽を吹くはずだと
    不可思議な応答に
    何だか微笑ましさを感じました
    嫌な心地はしないので
    そのままにしておくことにします

    うとうとしていました
    さっきお天道様が還って往かれたのです
    それなのに
    瞼を照らす明かりを感じます
    どうしたのでしょう
    目を開けて
    息を飲みました
    胸の土塊から
    翡翠色の芽が伸びて行きます
    濃紺の空に
    数多瞬く星々
    まるでそこを目指すように
    翡翠色の筋が昇っています
    暫くして
    芽はくっきりと茎になり
    鮮やかさを残したまま
    枝分かれを始めました
    手のひら
    募る思いを届けたいのですね
    知らぬまに
    涙が溢れてきます
    翡翠色の光の中へ
    滴が吸い込まれました

    美しい木は
    もうすぐ柔らかな葉を星に繋ぎそうです
    幹の管が
    キラキラした輝きの粒を運んでいます
    あああれは
    今しがたの涙に違いない
    サラサラと
    噴き上がる砂金を眺めます
    宵闇に
    光芒が咲きました
    翡翠色の木は
    星に思いを届けられたのです
    夜空に
    新たな実を点します

    この胸の土塊に
    瑠璃色の鳥がくれた赤い実の種は
    翡翠色の木に星を実らせました
    この胸の土塊は
    あたたかな畑になりました
     

    深爪

    • 2010.06.04 Friday
    • 20:27
    優しいのは偽ることなの?
    素直なのはぶちまけることなの?
    よくわからないけど
    また爪が伸びてる
    切ろうか
    削ろうか
    いっそ
    剥ぐ?
    誰かを引っ掻くといけないから
    いつも深爪してしまう
    そして気づくと
    半笑いで白いとこが伸びる
    自分を痛くするのは
    自分のせい
    わかってるよ
    だけどね
    また切りすぎちゃった
    優しさについて悩むのは
    優しくないからなのかな
    深爪ばかりするのは
    切りかたを知らないからだね
    もうずっとやってることなのに
    なんでうまくできないんだろう?
    素直になろうって
    爪を伸ばしっぱなしにしたら
    すぐに引っ掻いちゃう
    ごめんね
    負担をかけないように
    削るのが良い
    いくら教わっても
    聞いた通りやれない
    だから簡単に
    合わない道具で
    適当にはさみこんで
    ひしゃげた白いとこ
    半泣きになる

    夜霧

    • 2010.06.05 Saturday
    • 23:07
    JUGEMテーマ:

    夜霧は闇さえ重く霞めて
    齧りかけの月を包む
    片割れを失くしたような半端な夜の眼
    淡い橙色は黒い靄に籠り喪に服す
    齧られた片割れが戻ってきて満ちるまで
    けれどその片割れは漆黒の歯形を付けるだけかも知れないよ
    残った顔にも喪服を被せるかも知れないよ
    靄の裡で月は応える
    仮令そうでも怖れはしません
    私の希望は蝕まれない
    この身が貴殿方に見えようと見えまいと
    私は生きています
    だから甦る刻を待って籠っているのです
    応えた月の真下で
    精気を吸われた人が硬直する
    蝕まれない希望は地上にありますか?
    夜霧に埋もれた人には息がない
    月は黙って喪に服す
     

    Endless Bedless

    • 2010.06.06 Sunday
    • 22:02
    寝付けない
    瞼の裡に烈しい色が渦巻いて
    休めない
    逆睫より辛い刺激に曝されて
    微睡む悦楽も
    落ちきる熟睡も
    夢のまた夢

    還れない
    羊水の波と戯れた一間(ひとま)の宇宙へ
    入れない
    懐の奥に敷かれた真綿の布団へ
    汗ばむ絶望と
    隔たる外界と
    夢も見ず暮れ

    常恒(とこしえ)に床を得ず
    何処迄も床は無く

    エンドレス・ベッドレス
    眠れぬ日々が回転する
    エンドレス・ベッドレス
    戻れぬ道が睥睨する

    雨の花

    • 2010.06.07 Monday
    • 22:44
    狂おしい雨 懊悩する花
    どうしたい どうされたい
    可憐な露を置く暇も与えず 降り頻る
    居なくなって欲しい でも
    一生貴方なしでは 枯れてしまう
    苦しさが 憎しみを生む
    あんなに恋しかったのに 今は根腐れさせる
    悶える花弁 もがく土
    嫌いになりたい 嫌われたい
    毅然とした態度を貫けず 拒めない
    逝きたくて 生きたくて
    一生貴方だけに 尽きてしまう
    怨みがましく 天を睨(ね)め上げる
    こんなに甚振(いたぶ)るのなら 墜ちてくればいい
    喘ぐ稲妻 兆す闇
    この身諸共 潰しなさい

    分別 -ポイ捨て禁止-

    • 2010.06.08 Tuesday
    • 21:29

    くしゃくしゃに丸めて
    ムチャクチャな感情
    空き地に放った

    〈痛っ!〉

    誰かが叫んだ
    誰も居ないと思ったのに

    〈痛いよ、痛いよ〉

    悲しく震える声

     ごめんね、ごめんなさい

    目を凝らす
    何の影も見えない

     どこ?どこに居るの?あなたは誰?

    返事がない

     ねえ、大丈夫?
    〈うん、なんとか大丈夫だよ、きみは平気?〉
     え、何で?

    どうしてそんなこと
    ちぐはぐな返答

    〈だってきみの方が痛いでしょ?〉

    意味不明
    泣きそうになる

      教えて、誰なの?何で見えないの?
    〈見えなくて当然だよ、だって〉
      だって?

    言い出し兼ねてる雰囲気

    〈あのね、きみがさっき投げ捨てたの、ぼくなんだ〉
      え?
    〈ぼくであり、きみなんだよ〉

    混乱してまた
    くしゃくしゃにしたくなる

    〈要らなくない感情までいっしょに引き剥がしたから、ヒリヒリしてるでしょ?〉

    胸が火傷してる
    捨てたら心はまっさら
    きれいになると思ってた

    〈感情を捨てる時は分別が大事なんだよ、ムチャクチャなら尚更ね〉
      ぶんべつ?
    〈要るもの要らないもの、捨てるにしても燃えるゴミ不燃ゴミ生ゴミ、リサイクル、沢山あるよ〉
      そんなに細かく

    胸に手を当てる
    心臓が動いてる

    〈捨てる場所にも気をつけてね〉
      専用の場所があるの?
    〈うん、だからポイ捨てはダメだよ〉
      知らなかった

    目の前の空き地
    静かに眺めて見つけた
    小さな花々

    〈可愛いでしょ?〉
      うん、さっきは目に入らなかった
    〈でも今は見えてる、綺麗だなって〉
      そうだね
    〈だから、いいんだよ〉
      そうなの?
    〈もう、ヒリヒリしてないでしょ?〉

    火傷の感覚が無い
    ちょっとふんわかしてる

      治ってる!
    〈良かったね〉
      うん、ありがとう

    花が拍手した
    そんな気がした

      戻ってきてくれる?
    〈え?〉
      だってポイ捨てはダメなんでしょう?だから、持って帰る
    〈ほんとに?〉
      ほんと!

    やわらかい風
    やさしくそよぐ

    〈じゃあ、帰ろう〉
      うん、帰ろう

    花が手を振った
    さわさわサヨナラ

      これからもよろしくね
    〈こちらこそ、よろしくね〉

    見送る空き地
    にこやかだった
     

    阿蘭若 -aranya-

    • 2010.06.09 Wednesday
    • 19:57
    阿蘭若(あらんにゃ)
    其処(そこ)では空が空のように空であり
    土が土らしく土であります
    星は星として星の光を放ち
    森は森のまま森であらんと欲します

    阿蘭若
    静かなる場所
    平穏の住処(すみか)
    気を育むに最良の静寂(しじま)

    阿蘭若
    此処では夫々(それぞれ)が確実に夫々を成し
    夫々は即ち夫々に皆無なのです
    起承転結を織り込んだ呼吸
    聞こえず
    見えず
    それでも絶えず
    静は動を有しています

    阿蘭若
    誰もが持てる聖地
    大樹の森の木陰
    愛しき胸中の四阿(あずまや)

    阿蘭若
    私はアナタニ
    会いにユク

    似たものどうし

    • 2010.06.10 Thursday
    • 18:26
    風がひどく乱暴に 
    開いたままの本をめくり続け
    ふと 飽きたように去って行った

    思いもよらぬ場面で放り出された物語は
    どうすることもできず 
    ただ無防備に置かれたまま
    次の読み手を待っている

    新しいページをめくることも 
    いっそ本を閉じてしまうことも
    もう 何一つ 
    自分ではできなくなってしまったから

    メトロノーム

    • 2010.06.11 Friday
    • 19:33
    今日はあなたに会えるから
    胸の中のメトロノームを丹念に調整してきた

    なのにあなたに会う数歩前で
    メトロノームは調子が狂って
    あなたが目の前にいる今ではもう
    完全に毀れてしまった

    速い速い
    体も頭もついていけない

    音符は散らばり五線紙は捩れ
    歌いたかったうたも歌えない

    メトロノーム

    こんなに使えなくしたのは
    あなたが初めてです